蝉しぐれ

 今年の新学期から始まった藤沢周平読破企画,仕上げは映画「蝉しぐれ」鑑賞.はい,朝一番で行ってきました.場所は初体験のJR二条駅側の東宝シネマズ二条.いやぁ,良かった〜〜! 

20年,人を想いつづけたことはありますか.


 原作は二度ほど読んでいますが,あの長編を映画にするわけですから,脚本は難しいでしょうね.私が期待していた場面は二つ.一つは,主人公・牧文四郎が切腹させられた父・助左右衛門の遺骸を引き取り,大八車で組屋敷まで帰るシーン.もう一つは,最後に尼になるヒロイン・ふくと文四郎の対面シーン.ここをどのように表現するのか?
 まず前者はロケ場所が気になるところですが,良かったですよ.坂の上を見上げると,両側の木が適度に伸びてトンネル状になっています.真夏の暑い昼下がり,疲れ切って坂道を上りきれずにいる文四郎,そこへ坂道の上から駆け下りてきたふくが遺体に合掌してから荷台を押し,二人で何とか上りきる.ふくの子役の女優さん,台詞は少ないのですが,健気な演技が泣かせます.
 最後のシーンは,とてもとても美しく撮れていました.原作ではかなり具体的な描写が続くのですが,映画では20年の思いを吐露しあう二人の台詞と表情が中心で,それまでの「おふくさま」から「ふく」と呼び捨て,時間を超えたつながりを確認する場面,これもまた泣かせてくれます.
 とても丁寧な仕事だなぁと感じたのは,ロケハンですね.かなり時間をかけて歩かれたのだろうと思います.山も田も川も,地域社会学の教科書にしたいほど,生活の舞台としての設定が見事です.できれば,もう一度時間を作って見に行きたいと思います.

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