●第265回市民寄席(2003年7月31日,京都芸術センター)
7月31日,朝一番で,ようやく仕上げた成績を教務課へ提出.体育会関係の書類の整理をして,早めに帰宅.次男は研究室の旅行で六甲山へ(明日まで).長男は和歌山から無事帰宅.私は夕方ツレアイとデパートへ買い物,夜は市民寄席へ. 京都市が主催する「市民寄席」は,かなり歴史のある寄席です.ここ数年間はなかなか余裕がなかったのですが,少し心に栄養が必要と自己判断して,今年は久しぶりの年間通しの「席札」を購入しました.以前は京都会館を利用していたのですが,近頃は京都会館は年1回だけ,後は「京都芸術センター」を定席として開催されています.旧明倫小学校の講堂が今夜の会場.午後6時半会場,7時開演ですが,すでに6時過ぎにはかなりの人が並んでおられました.
今夜の出演は4人.まずは,桂三金さん.私ははじめてです.三枝さんのお弟子さんということで,師匠の話題を入れたつかみから入って,「鯛」というネタ.活魚料理店のいけすの中にいる鯛のやりとりを描いた小品.はじめて聞きましたが,どなたの作品かは知りません.元銀行マンで「落語界の橋田壽賀子」というつかみがうけていました.前座ですから,客の出入りが落ち着くまでのしんどい時間帯,それなりに頑張っておられましたね.とはいっても,語り口はまだまだ素人ですが(20分).
続いては,月亭八天さん.私はこの辺りも知らないのですね.八方さんのお弟子さんですが,こう言っては何ですが,八方さんのお弟子さんとは思えぬくらい(!),しっかりとした語り口.噺は「遊山船」.これは,上方落語の夏の定番です.夕涼みに大川へ出てきた二人連れが,川を行き交う屋形船をひやかす噺.途中の物売りや花火の描写が,風俗落語としての値打ち.なかなかいい出来でした.故六代目松鶴の大きな声の高座を思い出していました.ただ,途中でいくつか今風のくすぐりを入れていましたが,これはやめた方がいい.笑いが欲しくなる気持ちは分かりますが,そこを我慢して原作の呼吸に力を入れれば,聴衆にはちゃんと伝わるものです.ま,この辺りは我慢がいるところなのですが(25分).
三番目は,桂米二さん.この辺りになればさすがに私も知っています.ただ,それほどちゃんと聞いたことはありませんでした.ネタは「軒付け」ですが,これは義太夫の噺.中に「一声,二節」という言い回しが出てきます.つまり,稽古屋の師匠が弟子をほめる時の決まり文句なのですが,米二さん自身にもそれが当てはまります.声にあまり張りがないのですが,かえってひょうひょうとした味わいがあって,亡くなった先代文我さんを思い出しました.プロらしい噺家ですね(35分).
トリは桂文珍さん.彼については,性格をとやかく言う人が多いのですが,やはり噺家の勝負は高座.その意味からすれば,「プロ」です.今夜は「胴乱の幸助」,ネタとしては「軒付け」とかぶる義太夫の知識を前提としているのですが,文珍さん自身が最近義太夫を勉強しているだけあって,うまい!枕だけで25分以上ありましたが,実はこれは新作の「新版・豊竹屋」という小佐田定雄さんの作品の一部.来月の独演会で披露するとか.噺をちゃんと聞かせて笑いがとれるという意味では,いまでは桂南光と双璧か.ただ,演出には若干の疑問が.中心となる「割り木屋の親父」のしゃべり方があまりにも故枝雀に酷似しています.まだまだ試行錯誤なのでしょうが,大事に取り組んで欲しいし,変化を見届けたい気がしました.長講50分をだれずにやり遂げたのはさすが.
第265回市民寄席
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